kyoto 2010 ~蓮華寺



その住職の一言は

これまでニュースで耳にしたり
自分の肌で感じたりするたびに

おかしいなぁ、今年は
とか
いったいこれからどうなるんやろね?
とか

幾分深刻な表情で
尤もらしい事を口にしているつもりでいながらも

自分の思考が
どことのう人ごとで
限りなくお気楽で

本当の部分では
事の重大さを全くわかっていなかったということを
改めて気付かせてくれたのだった


二年前の紅葉は酷いものだった

葉色はどれもパッとせず
例年なら様々な楽器による合奏の如く
視覚的にも調和を感じるはずの樹々のグラデーションは
行き先を見失い歩調を合わせることができずに
ばらばらと立ちすくんでいる隊列のように
その美しき統制力を失っていた
褪色の過程にありながらも
静かに脈打つ樹の息吹を人々に顕示するはずの生命力もまた
全くと言っていいほど感じられなかった


昨年の紅葉は前の年のそれに比べ
ずいぶんきれいであった

紅は燃えるように鮮やかであり
黄は黄金のように輝いていた
樹々は示し合わせたかのように一斉に衣を変え
色彩という声で高らかに自らの美を謳いあげていた

少なくとも私の眼にはそう映った


思えば
齢を重ね経験を重ねるにつれ
世の中や人の心がいかに複雑で深いものであるかを知り
ますます私は物事を見通せなくなってきた

それに反するかのように
純粋な自然の美には
魂が素直に反応するようになった

ようやく私も人並みな大人になってきたのかな

知らず知らずのうちに景色と自分の存在とを溶解させ
あやふやな境界の中でそんな自惚れた陶酔状態に陥るほど
去年の紅葉は美しく
圧倒的であった


「今年はきれいですねー、去年よりずっと。」

迫りくる色彩の競演を前にして
半ば放心状態でそう話しかける私に
僅かに顔を曇らせ淋しそうに寺の住職がこう答えたのだった

「それでも昔、そう30年程前はもっときれいでございましたねぇ。
今年の紅葉も以前ほどではございません。
昔はもっと鮮やかな色をしておりました。
日本の秋がどんどん短くなって、
最近ではもう秋がないような状態になってまいりましたから。」

日本の秋が消えつつある
静かに語る住職の言葉に愕然とした
しかしそれはこれまでにも何度も耳にしたはずの言葉であった

秋がなくなる
それはつまり
この目の前に広がる鮮やかな美しい樹々もついにはその色を失い
この端然とした華やかで奥深い日本独自の秋の景色が
やがては消えてしまうということなのか

絶対に失いたくないもの
日本人として最も誇りに思っているものの
もろく朽ち果てていく未来を宣告されたような錯覚を覚え
私は茫然として
風の中できらめき続ける樹々の姿を見つめていた。。。





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昨年は留学生と金閣寺、龍安寺、常寂光寺、平等院、伏見稲荷などの有名どころを
感性豊かな親友とは曼殊院、詩仙堂、三千院、蓮華寺、宝泉院、瑠璃光院などを廻りました

今回upする写真は
京都洛北にある蓮華寺
目立たぬようひっそりと佇むそのお寺は
中でも私の一番のお気に入りであります

上記の住職との会話はこちらで交わされたものです
長きにわたって
庭を見続け、守り続けた住職のこの時の言葉は
わたしにとって非常に重くショックなものでした

目の前の美しい景色はもはや止めることのできない変化の中にあり
日を追うごとに悪い方向へと向かっていっているのだという事実に
私はようやく気がつきました


記憶の中の昨年の京都は
それはそれは美しいものでした

今改めて見返してみると
残念ながら写真はその美しさの100分の1も捉えておりません
撮影者(私)の力不足、
そして一眼レフとはいえ女子でも簡単に扱えるお手軽なカメラの限界

あるいはあの美しさそのものが
私の幾重にも重なった心のフィルターがもたらした幻だったのかもしれません




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by konekohaku | 2011-02-27 12:21 | 生活  

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