ベッジ・パードン



上京ついでにとある方のご厚意で観ることになったベッジ・パードン


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企画制作 シス・カンパニー

作・演出 三谷幸喜

主演  野村萬斎
     深津絵里
     大泉 洋
     浦井健治
     浅野和之

@世田谷パブリックシアター


明治33年、明治政府の命を受けロンドンに留学した夏目金之助(漱石)
異国での疎外感、孤独感、挫折感からひきこもり状態にまでなったと言われる当時の
閉塞的状況から
後の才能開花を予感させる「文豪・夏目漱石」序章までの心情の移ろいを
彼を取り巻く人々との関係と
淡いラヴストーリーに載せて描いた作品

結論から言えば
いやほんまに面白かった!

幕が下りた途端、同行の友人と驚きと感動を持って顔を見合わせたほど

「ろくでなし啄木」「国民の映画」そしてこの「ペッジ・バードン」
今年の三作品の中では断トツの一位
いや、今まで私が観た三谷さんの舞台の中でも
間違いなく3本の指に入ると言わせて頂こう!

私がう~んと唸ったのはキャスティング

金之助(漱石)を演ずる萬斎さんの存在が浮いているんですよ
特別に器用な役者さんが配置されている中で
空気が一人だけ違う

そもそも狂言師であられる萬斎さんの髭を蓄えた背広姿自体
微妙に違和感^^

周りの役者さんの
スピード感あふれる軽い身のこなし
留まることのないかのように高速回転する演劇的頭脳
ぺらぺらぺらぺらこれでもかっ!ってほど流暢かつ滑舌よい台詞まわし
そして絶妙な間

そんな中において
萬斎さんはすべてにおいてぎこちなく
馴染んでいないように見える


でもこれって実は
全く異なる生活習慣、文化を持つ国に突然放り込まれて
西洋人という容姿も言葉も服装も違う別世界の人たちに囲まれ戸惑い悶々とする
金之助(漱石)の姿そのもの

日頃伝統文化に身を置く萬斎さんのような方でなければ
こういった全身から漂う異質感は醸し出すことができなかったでしょう

下手をすれば
やっぱり狂言師が現代劇を演ずるのは無理があるよね~なんて言われかねない状況を
逆手に取った三谷さんならではの計算しつくされたアイディアなんだろうと思います
(実際、役者が話す日本語のセリフは
本当は英語で会話されているものなんですよ、と
わざわざ観客に念押しし再確認してもらう工夫が
面白おかしく、実に巧みな方法でなされている
萬斎さんのもついい意味での違和感・独特の存在感は
英語圏に突然飛び込んだ日本男子の姿を現していることを
忘れないでと言わんばかりに)

やられたゎ~

帰ってからネットで調べてみたら
「萬斎で現代劇を」とのシスカンパニーからの依頼を受け
この作品の構想を練り始めたとのこと

なるほどねぇ
さすが三谷さんです


透明感溢れ、女の私も惚れちゃうほど愛らしい深っちゃん
11役をこなし会場中を爆笑の渦に巻き込んだ浅野さん
(一人の役者に様々な人物を演じさせることで
日本人金之助の目にはイギリス人が皆同じ顔に見えてしまうことを表現)
内面に少々ダークな部分を含蓄する風変わりな日本人を演じた存在感抜群の大泉さん
今までにないワイルドでええ加減で小汚い青年を見事に好演した浦井くん

上手いよ、皆さん
大満足!


金之助(漱石)の世話をする下宿屋の小間使いアニー(深っちゃん)が
"I beg your pardon?" と尋ねると
強いコックニー訛りのせいで
彼には「ベッジ・パードン?」と聞こえる
そのことから金之助は彼女のことを「ベッジ」と呼んでいた
漱石の残した日記にベッジは度々登場する

お高くとまったイギリス人にはまともに相手にされず
社会の底辺で生きていたベッジと異邦人である漱石が
ロンドンの片隅にある小さな下宿屋で
孤独な心を寄せ合ったのはごくごく自然な成り行きだろう

舞台にやさしさと懐かしさを乗せて流れる
「Wouldn't It Be Loverly?」のメロディ
あの名作「マイフェアレディ」でコックニー訛りのある主人公イライザが歌った曲だ

この歌は叶うことのない夢を見
日々の生活の中での僅かな出来事に幸せを見出していたベッジそのもの

今改めて耳を傾けると
一人の女性の薄幸な人生に思いが重なり
涙がにじむ

ベッジは紛れもなく
漱石にとっての "my fair lady" やったんやろなー

ほんまにええ作品でした





All I want is a room somewhere,
Far away from the cold night air.
With one enormous chair,
Aow, wouldn't it be loverly?
Lots of choc'lates for me to eat,
Lots of coal makin' lots of 'eat.
Warm face, warm 'ands, warm feet,
Aow, wouldn't it be loverly?
Aow, so loverly sittin' abso-bloomin'-lutely still.
I would never budge 'till spring
Crept over me windowsill.
Someone's 'ead restin' on my knee,
Warm an' tender as 'e can be. 'ho takes good care of me,
Aow, wouldn't it be loverly?
Loverly, loverly, loverly, loverly
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by konekohaku | 2011-07-19 23:06 | movie・theater  

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