紫陽花 12-3
映画「ピアノマニア」の中でピエール=ロラン・エマールが演奏していた
「フーガの技法」のCDが
図書館にあったので借りてきた
曲番によって微妙に音色を変えているのが聞き取れる
ああなんて心地いい響きなんだろう
ホールの隅々にある残響音まで小さなCDの中に閉じ込められているようだ
エマール、調律師、録音技師があれほど
一音一音に魂を込めて録音したんだもの
最初は私の抱くバッハを連想させる音と若干の違いがあって
どうなんだろう?って正直思ったが
演奏が進むにつれどっぷりとその世界の中に引きこまれてしまった
グールドをして「あらゆる音楽の中でこれほど美しい音楽はない」
と言わしめた未完の14番
極上のピアニストの演奏に身を委ねれば委ねるほど
その衝撃的な終わり方に心の動揺を覚える方も多いだろう
エマールの演奏においても同じく
陶酔の世界から突然正気に戻った時のように
どしようもない不安と孤独感に襲われた
だからこれはきっといい演奏なんだろうと思う
深遠すぎて何が正解かなんて私にはわからないけれど
by konekohaku | 2012-06-21 20:48 | flowers