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Cabaret 1


<ネタばればれです ご注意ください>


初めて嵌った外国映画はライザ・ミネリ主演のキャバレーだった。
ビデオテープ(DVDではなく、笑)を擦り切れるほど繰り返して観たのは後にも先にもこの映画だけかもしれない。

ところが当時私はまだ幼くて(中学生くらいか?)大人の事情などわかるはずもなく、主役のサリーが恋人との別れの時、自らの決断であったにもかかわらず涙で振り返ることもできないほど辛そうにしていたのは何故だったのか、それに対して相手の男性はどうしてすっきり爽やかな笑顔でベルリンを去って行くのか、愛情が残っているのなら何故やり直そうとお互いに言い出さないのか、二人の離別の理由をどうにもこうにも理解することができなかった。

What good is sitting alone in your room?
Come hear the music play.
Life is a Cabaret, old chum,
Come to the Cabaret.

ラストで明るく熱唱するサリーはそう思わないとやってられない、といった風にその隙間隙間に笑顔とは別の顔を見せていた。

有名になりたいという自分の夢を叶えたかったから?それでは動機が弱すぎると子ども心に思ったものだ。彼女が別れを選択した本当の理由は何だったんだろう?



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先月NYへ行ったとき、数年ぶりにリバイバル上演される同舞台のチケットを押さえたのだけれど急に他の舞台(これ)が観たくなり結局見逃してしまった。
渡米直前に、代わりに観てくれる同行の友人の予習用にと映画版のDVDをレンタルしたので、私も鑑賞することにした。実に数十年ぶりのCabaretだ。

有名な「willkommen」の曲を背景に、
(Leave your troubles outside!
Life is disappointing? Forget it!
We have no troubles here!
Here life is beautiful...
The girls are beautiful...
Even the orchestra is beautiful! )
後に主人公サリーの恋人となる男性(映画版ではブライアンという名のイギリス人)がベルリンの駅に降り立つところから物語は始まる。

ブライアンがサリーと出会って間もなくのシーンだった。二人の会話と行動を観て、私が抱いていた長年の謎は一瞬で解けた。
なんだ、そういうことだったのか。
まるで一つの石の存在で景色が一転してしまうオセロの板のように子どもの頃には見えなかったこの映画の別の姿が明白な形でもって浮かび上がりサリーが結局ブライアンとの別れを選択せねばならない事情が読めたのだった。

Cabaret 1_b0148547_11125529.jpg



リバイバル舞台はそれはそれは素晴らしかったらしい。
そして音楽は同じだけれども内容に関しては映画版とは別物だった、と友人は言う。

興味津々で、帰国後1998年BWリバイバル版の映像を観た。
映画版と違い、狂言回し的存在のEmceeを中心に据え、ナチスの台頭とともに老若2組のカップルの人生の歯車が狂わされていく様が平行して描かれていた。
老カップルの方は果物屋の男性と宿屋の女主人という設定。
人生の伴侶を得、幸せな日々を手に入れようとしていたまさにその時に、相手がユダヤ人と知って宿屋の女主人は婚約を解消する。
「私はもう老いて生き方を変えられない、これまで戦争や革命やインフレを一人で乗り越え生き残ってきた、ナチスやコミュニストがやって来たって自分は生きる!」

若いカップルについては映画と骨格はほぼ同じ。
小説のネタ探しにベルリンに立ち寄ったアメリカ人クリフがキャバレーで働くイギリス人歌手サリーと恋に落ちる。
ナチスによって様変わりしていく社会状況に嫌気がさし、ここを出ようとサリーを誘うが、いとも簡単にベルリンを捨てようとするクリフにサリーはついて行けず一人残る決断をする、といった感じ(合ってるかな?)。

なるほど舞台版は歴史と政治の影響を色濃く反映した、深い内容のものだった。

しかしそこでまた別の疑念が。
映画版のディレクター、ボブ・フォッシーはこの舞台から後に老カップルではなく、どうして若いカップルの恋物語の方を掘り下げて描く気になっただろう?
私が作り手ならより時代に翻弄された感の強い、老カップルの方にフォーカスするだろうに。

もやもやを解消すべく色々調べてみると面白いことがわかってきた。
いや、そんなことは基本中の基本の情報だろう、という声も聞こえそうな気もするけどめげずに次回に続きます。。。

by konekohaku | 2014-05-25 20:09 | movie・theater  

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