2015年 10月 13日 ( 1 )

 

Fun Home


今年のトニー作品賞を受賞した「FUN HOME」を観ました。葬儀屋(funeral home)を家業とする家庭に育ったカトゥーニストであるアリソン・ベクダル。彼女の自叙伝的作品「ファン・ホーム ~ある家族の喜悲劇~」が原作の新作ミュージカルです。
b0148547_2133767.jpg




「自分の人生の始まりが父の人生の終わりになるなんて」
作中では現在のアリソンが父親との日々や自分の成長を回想。思い出すままに少女時代、学生時代のアリソンが交差します。時には3人が同時に舞台に存在、時系列もバラバラです。ゲイであることをひた隠しにしていた父親。一方父の秘密を知らなかったアリソンは幼少期から女の子らしくあることに違和感を覚え、成長とともに同性に興味を持つ自分に気付きはじめます。ついにレズビアンであることを両親に告白、その後まもなく父親は自ら命を絶ってしまいます。隠れゲイだった父親の死は、自分がレズビアンであることを「オープン」にしたことと関係しているのではないか?事故だった可能性も残されていますがアリソンは自殺と確信、苦悩します。


b0148547_2124021.jpg
                          Broadway.comから



「ダディこっちに来て、今すぐ。パパが必要なの。ねぇ話を聞いてよ。飛行機ごっこをしたいの。」
1時間45分(休憩なし)の上演の間に3人のアリソンから発せられる夥しい数のDaddy, Dadという言葉。この作品はアリソンの父親への思慕の情に溢れています。結びらしい結びはなく、これから先の人生へ羽ばたいていくために、父親との思い出や家族と過ごしたこれまでの半生を正直に丁寧に冷静になぞるアリソンの姿が描かれているだけ。決して暗い作品でもお涙頂戴でもなく、ユーモアを交えながら誠実に作られているという印象です。ちなみにトニー賞でのパフォーマンス、小アリソンの「Ring of Keys」はずいぶんと後半で歌われます。一通りアリソンのこれまでのセクシャルマイノリティな人生見てきた後ではじめて私たちは彼女の出発点を目撃するわけです。ある日突然、意図したわけでもなくごく自然にある女性に目をとめる幼いアリソン。これは大変意味深い。
円形劇場のぐるりと客席に囲まれた舞台の上にあるのはピアノ、ソファ、机程度。セリがあり棺やゲイユニオンのドアなどが出現します。背景がないのでライトニングには工夫が凝らされていました。舞台の端には小さなバンドが控えていて音楽は生演奏。シンプルであるが故に脚本や極上のパフォーマーによる演技の質の高さ、そして何より、誰も侵害してはならぬ人生の「尊さ」が浮かびあがります。これほど深く心に染み入りひっそり涙した作品はないかも。この春観たGypsyに続き、愛おしくてずっと大切に抱きしめていたい、そんな作品に出会えました。






Cast:
Michael Cerveris
Judy Kuhn
Beth Malone
Sydney Lucas
Emily Skeggs
Roberta Colindrez
Zell Steele Morrow
Joel Perez
Oscar Williams

Production Credits:
Sam Gold (Direction)
Danny Mefford (Choreography)
David Zinn (Set and Costume Design)
Ben Stanton (Lighting Design)
Kai Harada (Sound Design)
Chris Fenwick (Music Direction)
Lyrics by: Lisa Kron
Music by: Jeanine Tesori
Book by Lisa Kron
[PR]

by konekohaku | 2015-10-13 20:01 | NY