阿弖流為・オセロ


入院していた母親が退院してとりあえずの暗雲は立ち去ったものの、次にどんな雲がやってくるのか全く見当がつかない今日この頃。雨雲ばかりじゃなく幸せを運んでくる雲もたくさんあるといいな。

ずいぶん時間がたっちゃったけど印象に残ったものの感想を。


歌舞伎NEXT【阿弖流為】
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劇団新感線とタッグを組んだこの作品、劇画の実写化のような手触りでした。出演者の皆さん、シャキーン!という音に一秒の狂いもなく立ち回るんですよね、さすが(音声さんがすごいのかな?)。舞台がかなり傾斜していて、そこでの殺陣は体力的にさぞかし大変だっただろうなと。新感線ではいつものことだけど、爆音に耳が慣れるまでかなりしんどかったです。それだけに腹の底から出ていることがわかる発声とともに迫力は満点でした。中村兄弟の成長と確実な演技に、今は亡き勘三郎さんもさぞかし安堵し喜んでおられることだろうなとか、彼らもまた父親の温かな眼差しを感じながら舞台に立っているのだろうな、などと思うと何度も泣きそうに;;。特に七之助さんが素晴らしくて。「七之助ちゃんとよくゲームして遊んであげた」という歌舞伎通の友人にこのことを話すと、彼は父方母方両家のいいところをいい配分で受け継いでいる気がすると。なるほどなぁ。

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:
阿弖流為 市川 染五郎
坂上田村麻呂利仁 中村 勘九郎
立烏帽子/鈴鹿 中村 七之助
阿毛斗 坂東 新 悟
飛連通 大谷 廣太郎
翔連通 中村 鶴 松
佐渡馬黒縄 市村 橘太郎
無碍随鏡 澤村 宗之助
蛮甲 片岡 亀 蔵
御霊御前 市村 萬次郎
藤原稀継 坂東 彌十郎
@大阪松竹座



NTライヴ【オセロ Othello】


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1年くらい前に公開された時、現代バージョンだしなぁとパスってしまったのですが、再上映されると知りTOHOシネマまで観に行きました。これがほんとに面白くて。シェイクスピアの戯曲は人間考察がとてもよくされしっかりした骨格をもっているのでちゃんとした演出家が肉付けするともうもうもうもう(牛になっちゃうよ)。オセロがムーア人で(黒人)で美しい白人妻をめとった、イアーゴは潜在的にオセロが感じている人種的弱みにつけこみ巧みに操っているのですね。幕間の監督だったかどなたかのインタビューで語られた、軍における上司と部下の絶対的な信頼関係の話もこの作品を理解する助けとなりました。憎ったらしいイアーゴを演じているのはローリー・キニアさん。独特なシェイクスピアの台詞回しであるのに第一声からハムレットの時と全く違っていてびっくり@@。今回のオセロの方が段違いにいい演技でした。あんまり素晴らしかったので家に帰ってググってみたら、この役でオリヴィエ賞主演男優賞を受賞したそう。ナットクナットク。ラストシーンのオセロが妻を殺してしまうところはあまりにリアルで観ているのがちょっと辛かったなー。

演出:ニコラス・ハイトナー
作:ウィリアム・シェイクスピア/
出演:
オセロ:エイドリアン・レスター
イアーゴ:ローリー・キニア
デズデモーナ:オリヴィア・ヴァイナル
エミリア:リンジー・マーシャル
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# by konekohaku | 2015-11-08 23:06 | movie・theater  

Hamilton


最後に観たのは「Hamilton」。

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アメリカ建国の父の一人であるAlexander Hamiltonの生涯を描いた作品。脚本、作詞、作曲は「In the Heights」で有名なLin-Manuel Miranda、ハミルトン役も彼自身が演じています。

独立戦争時に頭角を現したハミルトンはジョージ・ワシントンからの絶大な信頼を得て初代財務長官に就任しドル硬貨の発行や徴税システムなどを構築、合衆国憲法を起草し、傑出した才能で今日のアメリカの基礎を築きました。しかしながらその生い立ちは決して恵まれたものではなく、建国の立役者たちが揃いも揃って名門出身だった中、私生児であり西インド諸島からの移民であった彼は異色の存在で、生涯その出自のことを周囲から言われ続けていたようです。(詳しくはwikiやロン・チャーナウの「アレグザンダー・ハミルトン伝」などご参照ください。)

元々ブロードウェイミュージカルは移民の流入とともに発展し、「主流」とされるものから弾かれた、というか入れてもらえなかった人たちが作りあげてきた文化、作品には今も人権の主張が見られ反骨精神が流れて続けています(キャバレー、コーラスライン、ウィキッド、、、、ほとんどがそう)。本作品もまさにその延長線上にあり、ニューヨークへ移住してきた歴史的ヒーローの生涯をブロンクス(マイノリティが多い)発祥のラップミュージックにのせ、配役をジョージ3世以外、黒人またはヒスパニック系で固めて表現。作者であるリン・マニュエル・ミランダの目の付け所、そして切り口の鮮やかさにはあっぱれというしかありません。

ハミルトンは女性スキャンダルを巻き起こした初の政治家でもあり、生涯心の支えとなった妻とその姉、ハミルトンを嵌めた女、3人の女性の登場が等身大の人間ハミルトンを多層的に描く重要なファクターになっていました。高潔な精神を持ちながらも攻撃的になりやすいという弱点もあったハミルトン、それは相手側に潜む差別的な目線に対するコンプレックスからくる反動だったのかもしれませんが、それだけに敵の多い彼を包む家族愛が観客の心を捉えます。

キャストは皆素晴らしく正直主役のリンが歌も踊りも一番見劣りした(笑)。客席には年配のカップルが多く女性で泣いている方が多かったですね。アメリカの繁栄を導いた偉人の、プライドをかけた最期に特別な思いがあるのかもしれません。
さて来年のトニー、何部門獲得しますかね。



cast:
Lin-Manuel Miranda
Phillipa Soo
Leslie Odom, Jr.
Renée Elise Goldsberry
Christopher Jackson
Daveed Diggs
Okieriete Onaodowan
Anthony Ramos
Jasmine Cephas Jones
Jonathan Groff


Production Credits:
Thomas Kail (Director)
Andy Blankenbuehler (Choreographer)
David Korins (Scenic Design)
Paul Tazewell (Costume Design)
Howell Binkley (Lighting Design)
Lyrics by: Lin-Manuel Miranda
Music by: Lin-Manuel Miranda
Book by Lin-Manuel Miranda
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# by konekohaku | 2015-10-18 09:42 | NY