マリア・ジョアン・ピリス&アントニオ・メネセス デュオ・リサイタル
ピリスさんとメネセスさんのコンサートに行きました。
ベートーヴェン:チェロとピアノのためのソナタ 第2番 ト短調 op.5-2
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 op.111(ピアノ・ソロ)
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調 BWV1008(チェロ・ソロ)
ベートーヴェン:チェロとピアノのためのソナタ 第3番 イ長調 op.69
アンコール
J.S.バッハ:パストラーレ BWV590より 第3曲
ショパン:チェロ・ソナタ op.65より 第3楽章
マリア・ジョアン・ピリス(pf)
アントニオ・メネセス(Vc)
兵庫県立芸術文化センター 大ホール
深い洞察力に色彩豊かな音、ピリスさんの演奏にはこれまで何度も驚かされてきたけれど、これほど味わい深い32番は聴いたことがなく今回もまた別次元の精神世界に触れたような気持ちに。32番はベートーヴェンの最後のソナタで、彼の最晩年と同じ齢を生きる今だからこそ、この曲に込められた万感の思いをピリスさんという一級の表現者を通して余計に汲み取ることができたのかも。最終章の幕切れにはほとんど泣きそうになりました。ピリスさんの演奏を聴くといつも、演奏者からピアノへ向かってのエネルギーだけでなく、打鍵によって響いてくる音が一度演奏者に吸収されて次の音に繋がっていくようなサーキュレイションを感じるのですが、メネセスさんとの間においても同様のよい循環が存在し、余白を含めたお二人の演奏に対する感覚が一体化しているのがよくわかりました。そしてメネセスさんのバッハの無伴奏。人格やテクニックに裏打ちされた深遠さと作曲者に対する誠実さが感じられ、音の一つ一つが細胞の隅々にまで沁み入る思い。この演奏からもピリスさんの音楽性と方向が一致しているなぁと。アンコールのショパンは濁りが一切感じられない美しさで言葉もなく。極上の音楽に触れて悦びに打ち震えた一日、そういえば子どもの頃から本当は何より音楽が好きだったんだ、とすっかり忘れていた自分を思い出させてくれました。
by konekohaku | 2015-11-11 06:46 | music