初日のソワレは「An American in Paris」を観ました。
映画「巴里のアメリカ人」が大好なので絶対に観たかった作品。大変美しい舞台でした。いろいろと思うところがあったので3つの点から振り返ってみます。
1、映像
舞台で使われるデジタル映像にはたいてい辟易する私ですが、今回のプロジェクションマッピングは一味も二味も違いました。主人公ジェリーは画家という設定、映画でも絵の中に入り込んで踊る有名なシーンがありますが、今回はそれをさらに進化させ映し出される背景はジェリーの描いた風景画とおぼしきもので、まるで彼のスケッチブックの中身を眺めているよう。第二次世界大戦後のパリを思わせる手書きのノスタルジックな風景が素敵な恋物語に非常に合っていました。ジェリーが池に落ちるシーンなどうっとりで、そのアイディアに唸りましたよ。
2、パフォーマー
主役はアメリカン・バレエ・シアターのロバート・フェアチャイルドと英ロイヤル・バレエ団のリアン・コープ。ダンサー陣は脇まで有名バレエ団からの起用だそうです。ロバートさんは普通に演技しているときは若干存在が薄く感じられることもあったのですが踊りだすと別人のように雄弁に。いい声ってわけではないですが歌も歌えます。コープさんはとにかく優美~。トニー賞パフォーマンス冒頭でも踊ったあのシーンは圧巻でした。会場中を虜にしたと思います。
難を言えば、バレエダンサーは人間離れした美しさで踊るのでバレエの世界ではそれが芸術性に繋がるものも、ミュージカルとなるとどうなんかな?という疑問が。ジーン・ケリーの踊りはセオリーに則ったバレエとは対極の、独学か?と思ってしまうほどの個性で、すごくチャーミングかつ人間臭く、役柄の画家として未熟な点もずっと片思いだったヘタレ時代もラストシーン直前のショボーンにも説得力がありました。一方お二人の踊りは素晴らしくて十分に見応えあったのですが、演技力が同様に際立っている訳ではないので、動きがきれいだなぁ、上手いなぁで終わってしまい映画に接した時ような胸アツにはなれませんでした。ストーリーが少し変わっていたことも影響しているかも。
3、音楽
出演者たちがいい意味で美のベールで隠れていたので、その分楽曲の素晴らしさが浮き上がり、この作品の真の主役はガーシュインだったんだ、と今更ながらに気付かされました。当然ですね、「巴里のアメリカ人」の楽曲が初めにあって、そこから映画を作ったのですから。NYブルックリン出身の作曲家ということもあってか、観客がガーシュインの楽曲に特別な親しみを感じていることも中にいて伝わってきました。"S Wonderful"の曲が流れた始めたときは拍手が起こりましたよ。
総合点では完成度の高い作品だと思います。まっさらな気持ちで観ていたらもっと違って見えたかもしれないな。それがなかなかできないんだけど。
トニー賞のパフォーマンス
Cast:
Robert Fairchild
Leanne Cope
Veanne Cox
Jill Paice
Brandon Uranowitz
Max von Essen
Production Credits:
Christopher Wheeldon (Direction and Choreography)
Bob Crowley (Set and Costume Design)
Natasha Katz (Lighting Design)
Jon Weston (Sound Design)
59 Productions (Projections)
Rob Fisher (Musical Score Adaptation, Arrangement and Supervision) Christopher Austin (Orchestrations)
Sam Davis (Dance Arrangements)
Todd Ellison (Musical Supervision)
Don Sebesky and Bill Elliott (Additional Orchestrations)
Lyrics by: Ira Gershwin
Music by: George Gershwin
Book by Craig Lucas
# by konekohaku | 2015-10-11 13:31 | NY